「言の葉の庭」は短編の映画ながら、心理描写が巧みで、繰り返し見ているとどんどんその世界観に引き込まれていきますよね。
何回観てもラストで泣けてくるのはなぜなのでしょうか。
本作は「短歌」が主人公とヒロインの関係を結びつける重要な役割を担っています。
作中では聞き取れなかった方は一度チェックしてみてください。
2回目を観るときにグッときますよ。
映画に出てくる短歌と訳
「言の葉の庭」ではヒロインの雪野が主人公の孝雄に以下のような短歌を詠むところから始まります。
万葉集に出てくる柿本人麻呂の相聞歌で、返歌もあります。
雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ
訳:雷が少し鳴って曇り、雨が降らないかな、あなたを留めたいので
雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて 降らずとも 我はとまらむ 妹し留めば
訳:雷が鳴って雨が降らなくても、私はここにいる、あなたがのぞめば
古典の先生だと気づいてもらいたかった?
ヒロインの雪野先生は、主人公が返歌を答えたときに「古典の先生だときづいてもらえるかなと思って」と言いますが、短歌なんて無数にあるのにこれを選んだわけですから、やはり本人の心情を込めていたとみるのが自然でしょう。
だれに留まってほしかったかは、映画の中盤に出てくる「元カレ」ですね。
主人公の孝雄とは出会ったばかりであり、自分の高校の生徒であることも分かっていたでしょうから、いきなり孝雄に恋心を持ったとは考えにくいので。
でも、孝雄からすれば自分に言われているわけですので、意味が分かると自分に好意を持ってくれてるのかもって思っちゃいますよね。
雪野先生、けっこうな悪女です。。
訳の分かんない短歌なんか吹っ掛けてきた女
映画の最後で孝雄はこらえきれなくなって雪野に悪態をつきます。
いつも大人な彼にしては子供じみた行動で、逆にそれが印象的ですよね。
「訳の分かんない短歌なんか吹っ掛けてきて」
孝雄から見れば大人のミステリアスな女性なわけです。
が、その短歌の意味は「あなたにそばにいてほしい」というかわいい歌。
劇中で雪野は「27歳の私は15歳の頃の私より少しも賢くない」と言いますが、短歌の意味と照らし合わせてみると、その言葉の意味が分かるような気がします。