「秒速5センチメートル」を見ました。
うつ、よくわからない、つまらない、トラウマな映画ともいわれますが、自分もはじめてみたときは2日間くらい放心状態でした。
先日いろいろ整理したうえで2回目を見ました。
「秒速5センチメートル」を見たときのこの感覚はいったいなんなのか、この気持ちはいったいなんなのか、整理が出来たのでブログに残そうと思います。
うつな終わり方で放心
ヒロインの明里がクライマックスで振り返らずに去ってしまうラストに放心。
いやまさに放心ですよね。
主人公が直前で「振り返る直感があった」って言って、電車が通り過ぎるのを待っていたわけだから、絶対振り返るだろって観てる人は思うと思うんですよね。
それが振り返らずに終わるわけですね。
びっくりしますよね。
自分は「ほんとにこれで終わり?」って10回くらい思いました。
でも、この映画はこれで終わりなんですよね。
次の日は仕事でしたが、半分放心状態で仕事してました。
いや~ショックが大きすぎるんですよね。
ずっと一日中「秒速5センチメートル」
仕事が終わってから、なんでこういう終わり方になってるのかをいろいろなサイトを参考にしながら考えてみました。
明里が神格化されてしまう
主人公がヒロインに会いに行く約束をした日、主人公の乗っている電車が雪で遅延するなかヒロインは夜遅くまで待ち続けてくれます。
雪の中待ち続けていてくれたヒロインのことを主人公は神格化してしまいます。
それはスクリーンを通してみている観客も同じでしょう。
この経験があるから、主人公や観客は、ヒロインは最後に「振り返ってくれる」と思い込んでしまいます。
連絡を取り合わないから結ばれるわけはない
ヒロインとは中学二年以降、一度も連絡を取り合っていません。
なので、ふつうに考えたら二人は結ばれるわけはありません。
現実的に考えたら結ばれる方がおかしい。
非常に現実に即したストーリーの映画と言えるでしょう。
お互いに別れをきちんと伝えない
主人公が電車でヒロインに会いに行ったのは、実はお互いにお別れを伝えに行くためでした。
ここが把握できていないと混乱するかもしれません。
(自分は把握できていませんでした、そして大混乱しました)
しかし結局はふたりともお互いに別れをきちんと伝えていません。
キスをきっかけに、あまりにも好きという気持ちが勝ってしまい、別れを切り出すことができなかったわけですね。
きちんと別れられなかったことが2人のその後に大きな影響を与え、とくに主人公は「踏切でヒロインが振り返らない」という「別れ」を経験してはじめて明里という初恋から別れられるわけです。
振り返っていたらバッドエンド
自分はラストシーンで明里に振り返ってほしいと思ってみていましたが、じっさいに振り返っていたらどうなのでしょうか。
ヒロインの明里は今の結婚の幸せを捨て、主人公と一緒になることが幸せなのでしょうか?
主人公は初恋からの別れを得る機会をなくし、永遠に初恋の呪縛の中で生きていくことが幸せなのでしょうか。
一見バッドエンドな「秒速5センチメートル」ですが、実際には「ハッピーエンド」であり、初恋の呪縛から解き放たれて明日を生きようとする主人公を描いて終わっているのです。
人には勧めにくい名作
というわけで鬱・よくわからない・つまらない・トラウマという意見も数多みられる「秒速5センチメートル」ですが、人の心に感動を与える(じっさい私は丸二日ウツでした)という点では素晴らしく、考えさせられる点や、話の深さも絵の美しさも申し分のない、(人には大変勧めにくいですが)まちがいない名作だと思います。