いろはにほへと

元証券アナリストのひとりごと

日銀の国債の含み損10兆円?そろそろYCC撤廃の予感

日銀の国債の含み損が10兆円を突破しました。

日銀が28日発表した2023年9月中間決算で、保有する国債の含み損が過去最大の10兆5000億円となった(時事通信社)2023年11月28日

本件について、「問題があるとする立場」「問題が無いとする立場」いろいろ考えがあるかとは思いますが、単純におもしろいので、一投資家の立場から見て、思ったことをまとめてみました。

 

日銀の実質債務超過となる条件

そもそも、日銀が実質債務超過となる条件はどのようなものなのでしょうか。

時事通信社の報道によると、2023年9月中間決算での日銀の保有する国債の含み損は10.5兆円。

それに対し日銀の純資産と債券取引損失引当金(下の財務諸表参照)は11.8兆円。

その差1.3兆円に迫っていることになります。

一方で9月30日時点での10年債金利は0.75%。

国債残高は586兆円なので、0.2%金利が上がると1.6兆円の含み損が発生します。

つまり、10年債金利1.0%というのが、日銀が実質債務超過とならないギリギリのラインと言えるでしょう。

現状、植田総裁は先の金融政策決定会合で、毎営業日指値オペの水準を変動幅の上限である0.5%から1.0%まで引き上げたが、この水準は日銀の実質債務超過を容認できないとするならば、最後のカードを切ったとみてよいと思われます。

 


日銀の債務超過は大丈夫なのかどうなのか?

中央銀行が債務超過となって良いかどうかについては諸説あり、実ははっきりとは分かっていないのが現状だそうです。

ただ、植田総裁はどのようなお考えかというと、以下のように発言されています。

「基本的に、中央銀行については、収益や資本の減少によって直ちにオペレーショナルな意味での政策運営能力が損なわれることはない。ただし、収益や資本の減少を契機とする信認の低下を防ぐため、財務の健全性への配慮も大事である」「通貨の信認は、中央銀行の保有資産や財 務の健全性によって直接的に担保されるものではなく、適切な金融政策運営 により「物価の安定」を図ることを通じて確保されるもの」(日本金融学会2023年度秋季大会における特別講演 2023年9月30日 植田和男)

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230930a.pdf

これを単純に理解すると以下のようになります。

  • 直ちに日銀が破綻するわけではない
  • ただし信認の低下を防ぐために財務健全性は配慮すべき
  • 日銀の信認の低下=通貨の信認の低下ではない

全体として非常にどうとでも取れるような内容ではあるものの、一つだけはっきりと述べていることがあり、「日銀の使命は物価の安定であり、物価の安定により通貨の価値は担保される」という考え方です。

つまり、ある程度の債務超過は容認する構えであることが分かります。

ただし、その「ある程度」が「どの程度」なのかについては特に述べられておらず、植田総裁自身にしか分かりません。

 

日銀の債務超過容認規模は約10兆円と予想

ここからは完全に私の予想の話です。

自分の予想だと、日銀の債務超過容認規模は約10兆円ではないかとみこんでいます。

というのも、日銀の毎年の収益額が約2兆円のため、2兆円×5年で債務超過が解消できる規模までは、日銀は債務超過を容認するのではないかとみています。

金利で言うと1.75%~2.00%程度までであり、これは日銀のインフレ目標と同等の水準にもなります。

一方で、このラインを超えて金利を上げなければならないとなると日銀はそうとう大変な立場に追い込まれるのではないかと思われ、いったん大きなインフレが発生した場合、対応が困難ではないかと予想しています。

 

と、ここまでいろいろ書きながらふと思いましたが、インフレ率も上がってきているので、来年4月目途にそもそもYCC撤廃じゃない? っていう気もします。

▼今年のはじめに書いた記事です▼

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