いろはにほへと

元証券アナリストのひとりごと

持家がトクか賃貸がトクか論争に決着がつかない理由と正解

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持家がトクか?

賃貸がトクか?

このテーマはず~となんやかんやで議論され続けていますけれども、なかなか答えが出ない・・というか個々人の価値観でちがうだのなんだの玉虫色な結論で誤魔化しておわる記事ばっかりなんですよね。

そういう答えは要らないのよ。

ちゃんとした答えを求めて記事読んでるんだよ。

吊りで記事出すのやめてほしいよね。

Yahoo!とかで記事が出てるたびに引っかかって読むんですけど、ちゃんとした答えを出している記事は見たことがない・・

というわけで今回は、個人の価値観の問題やらうんたらみたいな玉虫色な回答はしません。

私が間違いなく「こっち」と判断した結論と理由を述べたいと思います。

 

 

 結論:持家の方が賃貸よりトク

さっそく結論を言います。

賃貸の方がトクだという方もいるのは分かっています。

しかし市場論理から考えると、賃貸がトクということはありえないのです。

インベスターZを描いた三田則房さんも賃貸派ということで漫画を描かれていましたが、真っ赤な間違いだと思っています。

理由は以下に述べていきます。

 

不動産には一つとして同じものはない事が、結論が出ない理由

まず、持家と賃貸論争に結論がでない理由について考えていきたいと思います。

なぜこの論争に結論が出ないのか?

それは、不動産に同じものが一つとしてないことが原因です。

 

持家と賃貸論争を語る際、しばしばまことしやかなシュミレーションが出てくることがあります。

しかし、例えば、家賃10万円の賃貸マンションと住宅ローン10万円35年ローンの分譲マンションを比べてみよう・・みたいな議論は成り立つのでしょうか?

この両者が同じ物件なのであれば、比較はできるでしょう。

しかし、この両者がどういう物件かによって話はまったく変わってきます。

10万円の分譲マンションがすごく都心に合って立地も良い物件で、10年経っても購入時と同じ価格で売れる物件でしたら、当然分譲マンションの方がトクでしょう。

逆に、すごく田舎の誰も欲しがらないような物件で、10年経ったら買い手が誰もつかないような分譲マンションであれば、賃貸マンションの方がトクです。

 

不動産はどういう不動産であるかによって話がまったく変わってくるので、まず第一義には「どういう物件かによる」というのが正しい結論だと思います。

 

賃料には利益が上乗せされるから持家の方がトク

さて、では、物件によってまったく話が違ってくるこの論争に決着をつけるにはどうすれば良いのでしょうか?

その答えを導き出すには、ある賃貸物件を建築する際に、賃料はどのように決めるかを考えると良いと思います。

その物件に対し、賃貸で住む場合と、自宅として住む場合の費用について考えると持家がトクか賃貸がトクか結論が出せます。

 

たとえば、仮に3,000万円のアパートをあなたが建築するとしたら、賃料はどれくらいを見込むでしょうか?

まず、建築するにあたって借入をする場合が一般的なので、金利負担分くらいの賃料は設定しますよね。

仮に金利が2%なら2%分は賃料からもらう必要があります。

実際には金利変動も加味して、4%分くらいはもらいたいところです。

修繕も大家さん負担ですから、上乗せが必要です。

建物代金の1%くらいを見込めばよいでしょうか?

賃貸は空室の可能性もあります。

1年の内、2か月くらいは空室の可能性がありますから、そちらも賃料に上乗せします。

物件は徐々に劣化していきます。

毎年1%ずつくらい下がると予測して、賃料設定が必要でしょうね。

税金も支払いは大家さんですから、

税金負担分も盛り込まなくてはいけません。

建物は減価していきます。

仮に30年で償却するとすれば1年あたり100万円。

ここまでで、いくらになるでしょうか?

 

金利負担  60万円

修繕負担  30万円

空室負担  25万円

劣化対策  25万円

税金負担  25万円

減価償却 100万円

合計金額 265万円

 

ここからさらに大家さんの利益を上乗せします。

例えば、35万円ほど上乗せをした場合、年間賃料は300万円になります。

上の金額だけではほぼ利益0ですから、これくらいの上乗せは当然と言えるのではないでしょうか?

※今回は利益ベースで考えています。銀行への融資返済額=減価償却費とみなしています※

 

では、ここで自家用だった場合を考えてみましょう。

フラット35で借り入れをすれば、金利負担は2%の全期間固定で借入可能です。

持家でも賃貸でも家の修繕費は建物の1%を見ておけば大丈夫でしょう。

自分で済みますから、空室の心配や、劣化して賃料が下がる心配はありません。

減価償却費と税金負担は賃貸と同じです。

 

金利負担  30万円

修繕負担  30万円

空室負担   0万円

劣化対策   0万円

税金負担  25万円

減価償却 100万円

合計金額 185万円

 

利益や空室負担、劣化対策といった費用が必要でなくなるので、年間185万円の費用負担で済みます。

持家の方が賃貸よりも、年間115万円ほど負担は軽くなりました

 

もちろん実際には地域の賃料相場というものが存在していて、すべての大家さんが賃料をこういう風に決めているわけではないでしょうけれども、賃貸物件を建てるかどうかの判断も、賃料水準と建物の価格との釣り合いを見て決めているハズです

 

持家を買うなら不動産としての価値の見極めが重要

さて、持家の方が賃貸よりもお得だという計算になりましたが、持家の方が損になる可能性は、実はまだ残ります。

自宅に誰も住まなくなったときは、費用だけかかるという点です。

なので、持家を買う場合には以下の点についてよく考えなければいけません。

  • 本当にずっと住み続けるのか?
  • 住まない可能性があるならば、賃貸に出せるのか?
  • 死後売却は可能か?

住まなくなったときに貸せるor転売できる物件かどうかは重要です。

住まなくなって活用され無くなれば、どんなに良い物件もまさに腐動産。

どんなものもそうですが、買ったものがどれだけ活用されるかは、物を購入するにあたって非常に重要です。

不動産のような大きな買い物であればなおのこと、慎重に選びたいものです。